放射性物質が含まれる水や食物を摂取することにより、放射性物質を体内に取り込んでしまうことを経口摂取といいます。一方、埃や粉塵等に含まれる粒子状の放射性物質や空気中のガス状の放射性物質を呼吸により、肺に取り込んでしまうことを吸入摂取といいます。
口から食物と共に取り入れてしまった場合は、体内に留まっている期間は内部被曝し続けるが、いずれ体外に排出されます。一方、吸入により肺に取り込んでしまった場合は肺に留まる期間が長いことから経口摂取した場合に比べて体外に排泄されにくいという危険性があります(もちろんすぐに肺か体液に溶けて吸収されるものもあります)。特にプルトニウムについてその傾向が顕著であり、プルトニウムを経口摂取した場合は殆どが排出されるのに対して吸入摂取により取り込んだ場合は極めて体外への排出が困難であるというデータがあります。
[source: 原子力安全研究協会「緊急被ばく医療ポケットブック≪内部被ばくに関する線量換算係数」]
※上記、非常に参考になる資料ですが、リンク切れとなってしまいました。
上記の実効線量係数を比較すると、セシウム137で吸入摂取は経口摂取の3倍程度、ストロンチウム90で数倍程度、プルトニウム239で数百倍程度となっていることがわかります。
吸入による内部被曝の危険性が極めて高いことは、原発作業員の皆様が着用している「防護服」を見てもよくわかります。実は防護服には放射線を防護する機能はありません。つまり外部被曝には一切無防備だということです。放射線を遮蔽できる防護服を作るとすると、中の人間が動くことが不可能なくらい重くなってしまいます。(自衛隊の化学防護隊には甲状腺等を局所的に防護するための鉛やタングステン入りの特殊防護服があるそうです。)
放射線を遮蔽する効果はなくとも、防護服と全面マスクで体内に汚染された放射性物質を取り込まないことで、特に危険性の高いアルファ線やベータ線を出す放射性物質など内部被曝により重大な悪影響をもたらすものに対して有効と考えられているからです。ちなみに放射性物質による周囲の汚染を防止するため、防護服の多くは使い捨てです。
つまり原発至近距離においても外部被曝よりも吸引による内部被曝を避けることが遥かに重要なのです。まして、外部被曝の影響をほぼ考えなくていい東京においては吸引による内部被曝を防ぐことは放射能被曝対策の要と言えるでしょう。
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