2.肉・魚・乳製品の選び方と調理法

<何を飼料として食べているかが問題>

 

家畜の汚染度その家畜が何を飼料(餌)としているかにより汚染度が決定します。しかし、家畜の飼料や危険度について整理された情報が無いため、お困りの方も多いと多いと思われますので、下記の通り要点をまとめました。

 

種別

何を食べているか

危険度

対策

乾燥させた乾草稲わら稲を発酵させたもの(「サイレージ」という)、一部配合飼料 本来草食のため、汚染され易い内部被曝対策(食料編) > 1.野菜・穀物の選び方と調理法 参照)牧草稲わらを食用しているため、肉類の中では最も警戒が必。(飼料用稲わらのうち約9割が国産) 牛肉購入する際に個体識別番号を確認する。ひき肉等、個体識別番号の記載義務の無い部位は避ける。それが面倒な場合は豪州産を選択する。

配合飼料(とうもろこし、麦類、大豆粕などが中心) 本来雑食性だが、自給率の極めて低いトウモロコシが飼料内における最大割合を占めているため、牛肉に比べて汚染度は低い 配合飼料内に魚粉や脱脂粉乳が含まれているため、完全に汚染を排除することはほぼ不可能。九州、沖縄産の黒豚が汚染の可能性が相対的に低い。米国産の入手も容易。

配合飼料(内とうもろこしが半分以上を占める) 飼料の大半は輸入原料であり、危険度は低い。ただし、最近はトウモロコシの代わりにコメ粉を与える例が増えている(豚も同じ)ため、一部注意が必要。平飼いの場合、草の芽などを食べるため、関東・東北エリアのうち土壌汚染度が高い地鶏は注意 豚肉と同じく、完全に汚染を排除することはほぼ不可能。屋外での平飼いの地鶏の場合は地表から汚染された土埃を吸い込む可能性があるため、西日本産を選択。ブラジル産等の入手が容易。

同上 同上。ブロイラー用の飼料に大きく変わりないものの、同じくコメ粉を与える場合あり。ただし、卵を産む鶏はケージで多数飼いされていることが多く、地表からの汚染粉塵を取り入れるリスクは小さい 屋外での平飼いの地鶏の場合は、西日本産を選択。ただし、高価なことが多い。

 

 

<海流は風と違って大きく変わらない>

 

汚染水の継続的な漏洩が報じられている現在、海産物の汚染度は我々にとって重大な関心事です。海産物についてはセシウムよりも毒性の強いストロンチウムによる汚染が心配されていることに加えて、現状の技術では除去が難しいトリチウムによる海洋汚染が懸念されています。

魚の産地(水揚げ地)から安全性を判断するとき、まず我が国周辺の海流を把握することが重要です。下記の「海上保安庁」のマップが示す通り、太平洋を日本列島の南岸に沿って流れ、房総半島沖を東に流れる代表的な暖流、これが「黒潮」です。

 

[source: 海上保安庁 海洋情報部 「海洋速報&海流推測図」]

ページ中央部の「海流」のイラストをクリックすると最新の海流予測がご覧になれます。

その他、日本近海の海流は下記の通りです。

 [source: Wikipedia「日本列島近海の海流」]

黒潮は西から東に流れるため、北海道で水揚げされた魚もそれが太平洋側であれば汚染の可能性があります。実際、北海道太平洋沖で漁獲された魚からはセシウムが検出されたものが複数あるので注意してください。比較的安全なのは日本海側で漁獲された水産物です

土壌の汚染度はかなり低い北海道ですが、海流により北海道の南の太平洋沖の海水は汚染されていると考えられます。下記の通り、北海道で水揚げされた魚のうち太平洋沖で漁獲した特にマスをはじめ、サンママダラスケトウダラに放射性物質の検出事例が多いことがわかります。

[source: 北海道HP「北海道における水産物の放射性物質モニタリングなどの結果」]

 

では房総半島より南方であれば安全かというとそうではありません。黒潮が大きく離岸すると、黒潮の流れとは逆に沿岸流が南下することがあるため、太平洋岸の魚は最低でも漁獲地が静岡以西であるもの以外は避けた方が望ましいです。

ただ、 水産物は漁獲地ではなく水揚げ地のみ開示されていることが多いため、注意が必要です。千葉県沖で漁獲した魚は千葉県産としてでは売りにくいため、静岡で漁獲したり、中には三重県で水揚げするという悪質な例もあるようです。よって、太平洋側の水産物は水揚げ地が和歌山以西のものが望ましいと考えます。

 

こちらはASR社というグローバル海洋調査会社による太平洋の海洋汚染のシミュレーションですが、太平洋については北海道沖まで汚染されている可能性が高いことが理解できると思います。

ASR社海洋汚染地図

 [source: ASR社「Radioactive Seawater Impact Map (update: March 2012)」]

 

原発事故当初に海に汚染水として大量に流出した放射性物質は現在ではその多くが海底付近に蓄積されています。そのため、ヒラメ、アイナメ等の海底で生息する魚の汚染度が高い傾向にあります。魚の汚染度はその生態によって大きく異なるため、回遊魚やいわゆる「底物」といった種類の魚はできるだけ避けるのが賢明です。実際に高い汚染が検出されている魚の種類としては、コウナゴ、  アイナメ、イシガレイ、 ヒラメ、  スズキ、アナゴ、 アンコウ、 サケ、 マグロ、 カツオ、 イワシ等です。安全策を取るのであれば、これらの種類の魚については漁獲値に限らず、日本近海のものは避けるというのもひとつの手であると考えます。

 

その後2013年以降に福島第一原発のタンクから汚染水の漏洩が明らかとなり、汚染水は仮設の貯蔵施設からも、原子炉からも継続的に漏れ続けており、これら高濃度汚染水が垂れ流される以上、海面付近も安全とは言えません。生態濃縮も含め、残念ながら海産物の汚染は時間が経つほどに悪化していくものと考えるべきでしょう。

グリーンピース シルベク

[source:「国際環境NGOグリーンピース」による海洋調査結果]

 

 

<汚染度を下げる調理法を頭に入れておく>

 

調理の前にまず、セシウムは水溶性のため表面をよく洗うことが重要です。

できれば、水洗いだけでなく、さらに塩水につけることで汚染度を下げることができます。

肉:冷凍し、解凍してから3~6時間程度、塩水(濃度10%程度)に浸す。

魚:うろこ、ひれ、頭、内臓を取り、小分けにし、塩水(濃度5%程度)に1日程度浸。(さらに時々水を交換することで9割以上取り除くことができたという研究結果もあります。)

 

次に、汚染度を下げる調理法、また下げる効果のない調理法について説明します。

とにかく煮る(煮物・煮付け)、酢漬け・塩漬け:これらはいずれも食品から水分が出る調理法です。特にセシウムを食品から水の方に移す効果が期待できます。

×焼く、揚げる、蒸す:これらはいずれも水分を食品中に閉じ込めてしまいます。これらは危険な調理法という意味ではなく、汚染度を下げる効果がないということですので、明らかに汚染されていないとわかっている食品に対しては何の問題もありません。

 

 

<牛乳は特に警戒が必要な代表格>

 

牛乳は事故当初より危険が騒がれており、事故から2ヶ月経った時点においても、「放射性物質:農産物、3割の市町村未検査 定点観測を優先」(毎日新聞 2011年5月20日)との報道があり、驚いたのを記憶しています。(ニュースリンクは既に消えてしまいました)

特に、東京の汚染度について > 東京は住めるのか にて文科省のモニタリング調査等にて高濃度の汚染が明らかとなった栃木県の那須町は2011年5月中旬時点において放射性物質の検査が未実施です。暫定基準値超えでも那須の牛乳は流通していたというのは非常に恐ろしいことです。チェルノブイリ原発事故後に甲状腺癌に見舞われてしまった子供たちの多くが汚染された牛乳を飲み続けた影響が大きいとされています。

なお、2011年3月の放射性物質の累積降下量は下記の通りです。

文科省「環境放射能水準調査結果(月間降下物)(平成23年3月)」

[source: 文科省「環境放射能水準調査結果(月間降下物)(平成23年3月)」]

東京とは「新宿」のこと、群馬とは「前橋」であることに注意が必要であるものの、測定地点においては放射性ヨウ素およびセシウムが降った量も東京は暫定4位(実質5位)で群馬(前橋)を凌いでいることに驚きです。

牛乳、および乳製品は近隣のものを消費するのが一般的であり、大手乳業会社の多くが放射性物質による汚染の調査に消極的であることから関東でそれらを摂取するときは極めて注意が必要です。内部被曝対策(食料編) > 1.野菜・穀物の選び方と調理法 で述べた通り、牧草類は放射性物質の降下による直接汚染を受けやすい上に移行係数も高く、それを主食とする乳牛から摂れる牛乳・乳製品は汚染される危険性が高いです。特に放射性物質が多く降り積もった地域である、宮城県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、栃木県、千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県産の牛乳・乳製品は避けるのが賢明です。

 

牛乳は危険性が高いので、カルシウムはサプリメントに頼り、基本的に飲まないように心掛ける、というのも一つの方法だと思います。筆者も毎日牛乳を飲んでいましたが、原発事故以降は日常的に飲むことを止めました。しかし、牛乳を全く飲まないという生活は難しいので、下記の牛乳を購入しています。


放射能汚染の危険性が低い「らくのうマザーズ 大阿蘇牛乳」

【 関東への配送料無料】らくのうマザーズ 大阿蘇牛乳LL1000ml*6本(ロングライフ牛乳)

(送料込みで現時点で最も安いサイトです。ただし、大量に購入する場合を除く)

この「大阿蘇牛乳」は、熊本県の乳牛(福島県からの受け入れ無し)からの原乳を使用し、乳牛の配合飼料の産地は熊本・アメリカ・オーストラリア・カナダ、アルゼンチンで、稲わらは自牧場のものを微量与えることもあるとのことですので、安全性は高いと考えられます。

また、ロングライフ(賞味期限:製造日から約90日間)製品で常温保存可能であるため、災害時に備えた保管用にも使えます。

 

残念ながらメーカー独自の検査は行っていないということです。しかし、「セキュリティ トウキョウ」(トップページにリンク記載)によるゲルマニウム半導体検出器による放射能濃度測定結果が出ており、セシウム137の検出限界値0.16 Bq/kgの精密検査において「不検出」の結果が出ているため、危険性は低いと考えられます。

 

<牛乳からバター、チーズへの汚染の移行は少ない>

 

乳牛

牛乳と、バターやチーズといった乳製品では放射能汚染の度合いが異なることに注意が必要です。下記資料が非常に参考になります。(難解ですので、重要部分のみ抜粋しました。)

 

[source: 財団法人 原子力環境整備センター「食品の調理・加工による放射性核種の除去率」]

(抜粋) 牛乳のストロンチウム、セシウム、ヨウ素の80パーセントは脱脂乳に移り、精製したバターへの移行は僅か1-4パーセントである。脱脂乳を酸処理して得たチーズ( 酸処理) には2-6パーセントが移り、放射性核種の大部分はホエー( 注、チーズとなる凝乳を分離した後の液状部分で乳清ともいう)に残る。(但し、脱脂乳を酵京により凝固させて製したレンネットチーズについては興った傾向があり、セシウムとヨウ来は2パーセン卜程度にすぎないものの、ストロンチウムは80パーセントが移行する〕。このように牛乳の加工工程において、放射性核種のバターや酸凝固チーズへの移行は少なく、ホエーに集る傾向がある。厄介なことには、このホエーは捨てられずに乳清飲料やパン・菓子等への添加物として食用に供される。

 

つまり、牛乳、ヨーグルトに比べ、バター、チーズの汚染可能性は低い、ということです。乳製品というだけで一括りにしてしまう傾向があり、汚染の大部分はホエー(乳清)に存在するいうことはあまり知られていませんが、極めて重要なことですのでを頭に入れておいてください。すると、ヨーグルトも牛乳と同様の危険性があることが理解できます。ヨーグルトを食べる習慣がある人は、必ず上ずみの透明な液体(これがホエーです)を捨ててください。従来我々はヨーグルトの上ずみのホエーを捨てずに食べることを勧められてきました。

日本乳業協会ホームページによれば、「ヨーグルトの上に出てくる水分は、ホエー(乳清)というものです。ホエーの中には水溶性のたんぱく質や、ミネラル、ビタミンなどの栄養が含まれているので、捨てずに食べてください」と記載されており、ホエーは高タンパクで低脂肪で栄養満点ですので、汚染されていなければ是非とも食したい部分ではありますが、原発事故の後は多少勿体なくても廃棄するのが賢明でしょう。

 

そして、特に気をつけなければならないことは、牛乳そのものよりも、牛乳から乳脂肪分を除去したものから水分を除去し、粉末状にしたスキムミルク(脱脂粉乳)や粉ミルクが危険ということです。セシウムやストロンチウムは水溶性のため、脂肪分であるクリーム(乳脂肪分)ではなく、乳清(水分)の方に8~9割程度移行してしまうため、それを乾燥させたスキムミルク・粉末ミルクには放射性物質が濃縮されてしまうのです。

 

赤ちゃんに粉ミルクを与えるときは、くれぐれも原材料である原乳の産地に注意してください。最も安全性の高い対策は、ドイツ等の食品の安全性に対して意識の高い国の製品を使用することです。以下に、信頼性の高い製品を紹介します。


ドイツ Hipp Organic 有機原料使用・粉ミルク 600g x 8個セット (12か月から)

・Hipp Organic 有機原料使用・粉ミルク 600g x 8個セット (12か月から)

Hipp Organic 有機原料使用・粉ミルク 800g x 8個セット (6か月から)

Hipp Organic 有機原料使用・粉ミルク 800g x 8個セット (新生児から)

Hipp は1932年生まれの欧州最大の有機ベビーフード製造会社です。無農薬有機農法の規制が設けられる以前から、独自の厳しい基準を設けて、それに達しない製品は使用せずに製品を作り続けてきたオーガニック食品メーカーあり、同社の粉ミルクは無農薬有機農法で飼育した牛からの原乳のみを原材料としています。

もちろんドイツバイオ農産物法が定めるオーガニック基準をクリアーしており、ルフトハンザ航空ではHipp 社の離乳食のみ採用され、ドイツの病院の多くではHipp 社のミルクのみ使用されているという実績があります。特に内部被曝を避けなければならない乳幼児に対しては、念のため、これらの信頼性の高い製品を与えることをお勧めします。(母乳には放射性セシウムが移行することがわかっていますので、内部被曝対策に不安のあるお母さんは、安全な粉ミルクを赤ちゃんに与えた方がいいと思います。)

 

乳製品について整理すると、

・牛乳(生乳)は、①乳脂肪分であるクリームと、②水分である乳清(ホエー)に分離される。

・①が主原料である、生クリーム、バターの危険性は低い。

・②が主原料である、スキムミルク(脱脂粉乳)、粉ミルク、ホエーパウダーの危険性は牛乳そのものより高い。

となります。

 

ホエーは粉末のホエーパウダーに加工されてお菓子やサプリメントの原材料にされたり、生クリームの代用品としてケーキ(特にダイエット食品)に使用されたりすることがあるので、お菓子製品を買うときは「ホエーパウダー」(その他、「全粉乳」、「脱脂粉乳」、「乳糖」、「スキムミルク」等の記載に注意)が使われているか原材料をよく確認しましょう。また、イタリア製品で有名な「リコッタチーズ」等はホエーから作られた「ホエーチーズ」ですので、チーズだからといって安全とは決めつけないようにしましょう。(一般的にバターは安全性が高いと考えていいと思います。)

 

 

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