結論から言うと、東京では外部被曝を気にする必要はありません。これは、東京都内では比較的線量が高い東東京エリア(足立区、葛飾区、江戸川区等)、さらに東葛エリアの一部(柏、松戸、野田、我孫子等)においても同様です。
ただし、局地的なホットスポット(雨樋や配管等、長期間の放射性物質が滞留して毎時1μSv以上の線量を発するミクロの地点)を除きます。
これは次項 対策を考える上で > 内部被曝の恐怖 で述べる外部被曝と内部被曝の健康への影響の深刻度の違いから説明できますが、外部被曝のみの影響であれば年間5mSv程度までは特段対処は必要ないと考えられます(年間5mSvほどの被曝量を業務上強いられている国際線航空機乗務員に深刻な健康被害が生じているという情報はありません)。
放射性物質が体外に存在する場合、飛距離の短いアルファ線やベータ 線は体内の細胞に到達しづらく大きな影響を与えることができず、皮膚に多少の影響を及ぼすに過ぎません。貫通力の強いガンマ線だけが皮膚を貫いて体内の細胞に到達しますが、身体全体に放射線が平均的に放射されている状況ですので、特定の部位や臓器に集中して放射して細胞を癌化させるということにつながりにくいです。
一方、一旦放射性物質を体内に取り込んでしまった後に生じる内部被曝は極めて深刻な影響を人体に与えます。体内に取り込まれた放射性物質から放射される飛距離の短いアルファ線とベータ 線は体外へ貫くことなく身体の中で止まってしまいます。そこで持っている全てのエネルギーが細胞、遺伝子に放射されるため、細胞は局所的に継続的に強いエネルギーによる攻撃を受け続けるため、細胞の癌化につながりやすいのです。
外部被曝のみで年間20mSv程度の被曝線量が健康へ与える影響についても、癌の発生等の健康被害が生じる統計的に有意な結果は示さないことでしょう。放射線に強い体質をお持ちの方であればICRP(国際放射線防護委員会)が定める勧告基準である年間100mSvまでは特段の影響や症状は出ないことも十分あり得ることと考えられます。
ただし、今回のような放射性物質を含む粉塵が大量に放出されたという原発事故において外部被曝のみということは有り得えません。私たちがここ東京で体外からの放射線により外部被曝を受けているとき、その放射線を出している源は福島第一原発の原子炉ではなく、私たちの周りに付着・浮遊している放射性物質を含む粉塵や埃なのです。
「年間1mSv」と国や行政が基準を定めているのはあくまで外部被曝のみのカウントであり、行政が測定している空間線量の数値から年間の累積被曝量を算出して(毎時の数値×24時間×365日)、それが1mSvそこそこだから安心、というのは放射線被曝の害を論じるときに全く意味がないことです。行政やICRPが定める年間1mSvというのは外部被曝のみを考慮して、健康への影響が無いと言っているに過ぎないのです。このことは非常に重要なことですので、よく頭に留めておいてください。
重要なことは放射性物質を体内に取り込まないことです。現在の東京のように、多少なりとも外部被曝をするということは、同時に内部被曝を避けられない状況下にあるということです。外部被曝という観点では注意を要しない汚染レベルであっても、内部被曝という観点からは十分な対策が必要である、というのが現在の東京および南関東地域が置かれた状況と言えるでしょう。
具体的には、東京および南関東エリアであまり意味のない外部被曝対策とは以下のようなものです。
- 外部被曝の影響を少しでも遮るために、家の周りに水の入ったペットボトルを置く。(確かに木造住宅を貫くガンマ線も水で遮ることができます。)
- 外部被曝の影響を遮るために長袖を着るように心がける。(ただし、皮膚が傷がある場合等は非常に有効な対策です。)
といったようなことです。上記のような対策を取るのであれば、
- 放射性物質に汚染された埃や粉塵を吸い込まないようマスクをする。
- 衣服についた放射性物質を吸い込まないよう、頻繁に衣服を水洗いする。
といった内部被曝対策の方が遥かに重要です。
詳しくは、内部被曝対策(吸入編) をご覧ください。
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