では、その汚染度はどの程度なのでしょうか。最も詳細且つ広域な調査は、下記の文科省による航空機モニタリング調査結果に示されています。
[source:文部科学省「東京都及び神奈川県の航空機モニタリングの測定結果について」]
[source:文部科学省「愛知県、青森県、石川県、及び福井県の航空機モニタリングの測定結果について」]
「セシウム134、137の沈着量の合計」の値をご覧ください。一見、南関東エリアは東葛地域と一部埼玉県西部や奥多摩地域以外は汚染されていないように見えてしまいますが、セシウム量の最低分布を示すレンジが「10,000ベクレル/㎡以下」(表記上は「10k」とありますがこれは10,000のことです)であることに注意が必要です。最も汚染が少ないレンジの「薄い茶色」であるから安心というのことではなく、このエリアでは放射性セシウムが1平米あたり10,000ベクレル以下である、ということに過ぎません。
この調査では恐らく本来はもっと低い水準まで測定する能力はあると思われますが、下限を10,000ベクレル/㎡と高い水準に設定し、それ以下の汚染の度合いを見る側が判断することができないように設定した何らかの理由はあると思われます。いずれにせよ、それ以下の汚染度はこの調査からは読み取ることができません。
東京都内に絞ってみると、東部では足立区・江戸川区・葛飾区の一部で、その一つ上の「10,000~30,000ベクレル/㎡」のレンジに、奥多摩の一部ではさらにその上の「30,000~60,000ベクレル/㎡」のレンジの汚染が存在します。
よって、そのすぐ隣に位置する都心部が10ベクレル/㎡や0ベクレル/㎡といった水準であることは考えにくく、愛知県全域に記された「薄い茶色」の水準と、濃い茶色や青色に囲まれて記された都心部の「薄い茶色」が同じ水準であると考えるのは楽観的過ぎるというのがわかると思います。
実測値ではないものの、より低線量汚染まで示したシミュレーションマップもあります。これは、「米科学アカデミー」に掲載された研究結果です。
[論文「福島原発から放出されたセシウム137の日本全国への沈着量及び土壌中濃度の見積もり」2011年11月15日プレスリリース]
これは文科省による定期降下物データを基に、ノルウェーの大気輸送・拡散モデルを用いてセシウム137の沈着量と土壌汚染を見積もったシミュレーション結果です。あくまでシミュレーションであり実測値ではないことに注意が必要ですが、文科省の航空機モニタリング調査に比べて遥かに低濃度の汚染(5ベクレル/kg、10ベクレル/kg等)まで示されている点が評価できます。
航空機モニタリングでは調査対象エリアにすらなっていない北海道エリアが低線量ですが汚染されている可能性があること(ただし東京・南関東に比較すると概ね1桁低いレベル)、飛騨・木曽(アルプス)山脈、越後山脈、関東山地等により汚染された放射性雲の流れが遮られ、西日本エリアが低汚染となったであろうことがわかります。
<追記>
こちらは実測値ではなくシミュレーションであることを述べましたが、その後の各種の土壌汚染調査や各地のゴミ焼却場による焼却灰の放射能濃度測定結果等から北海道エリアの汚染度は長野県西部や静岡県西部よりも低い汚染度であることが明らかになっていることから、実際の汚染度とは乖離が生じているものと思われます。現実には北海道は汚染を気にして生活する必要のない地域と判断して問題ないでしょう。こちらは原発事故以降の比較的初期の分析結果であることから、現時点においては参考程度に捉えるべきと考えます。(2013年10月)