野菜・穀物は産地(愛知以西か北海道)と移行係数に注意

東京および関東の土壌が主に3月21~22日の降雨により汚染されたことは東京は住めるのか -1. 東京はいつ汚染されたのかに記載した通りです。そこで紹介した汚染マップによる土壌汚染分布からどの産地の作物の汚染度を推察しております。下記で産地を選ぶ際の参考にしてください。

 

汚染危険度

都道府県名

備考

極めて高い

福島県(会津地方除く) 福島県は一部作付制限あり。

高い

福島県(会津地方)、宮城県、栃木県、群馬県、茨城県 宮城、栃木、群馬、茨城の4県は市町村により大きな差異があるが、いずれも高濃度汚染地が一部に含まれているため、最大汚染可能性を考慮。特に宮城県の南部、栃木県の那須塩原・日光地域、群馬県の沼田・水上地方以北に注意。

やや高い

岩手県、山形県、新潟県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県 岩手県は一部ホットスポットあり。埼玉県、千葉県、東京都の一部(東葛エリア)は汚染度高い。

中程度

長野県、山梨県、静岡県、秋田県 長野県は東部の一部(軽井沢、佐久付近)以外は汚染度低い。(千曲川沿いに薄い汚染が広がり、長野市近辺も低濃度に汚染されている。松本・安曇野は汚染度低い。)。静岡県西部は汚染度低い。だし伊豆東部(特に伊東)の汚染に注意。秋田県は瓦礫の焼却が盛んなため「低い」からランクダウン。(以下、2012年7月追記)

低い

北海道、青森県 北海道の汚染度はゼロではないものの、ほぼ問題ないレベル。

ほぼ安全

愛知県、岐阜県、富山県以西

※注意:関東・東北地域の各県はいずれもエリアにより汚染度の濃淡があり、小さなエリアで見ると殆ど汚染がないエリアも存在します。しかし、野菜等の産地は都道府県名でのみ示されることが多いため、上記の表では最も汚染度の高いエリアの作物が含まれていることを考慮して保守的に作成しております。ご了承ください。

結論として、愛知県以西の作物を選択するのが最も安全と言えます。ちなみに筆者は愛知以西に加えて、完全に汚染ゼロと断言できない北海道の作物も選択するようにしています。北海道の土壌汚染度はゼロ~一桁ベクレル/kg程度であることに加えて、日本の食糧庫である北海道からの食材を絶ってしまうと食べるものが無くなってしまうので許容せざるを得ないと考えています。

 

原発事故当初、これら放射性物質を含んだ降下物(埃や雨)が直接畑に存在した野菜類を汚染したため、葉の面積が広いホウレンソウをはじめとする葉物野菜が高濃度に汚染されました。一方、原発からの放出量が抑制された(それでも十分多いのですが、2011年3月~4月との比較という意味で)2011年夏以降は、寧ろ土壌に沈着した放射性セシウム等を根から可食部へ移行しやすい作物の汚染度が高くなっています。事故当初の記憶が残っていて、野菜の中では「葉物野菜」さえ避ければ大丈夫、との認識を持たれている方は改める必要があります。

 

下記、農水省によるデータによれば、豆類、イモ類か比較的高い移行係数(農作物中の放射性物質濃度/土境中の放射性物質濃度)を示しています。

 

[source:農林水産省「農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行の程度」]

[上記プレスリリース(平成23年5月27日 農林水産省)]

 

こちらはより専門的な内容ですが、主に土壌の状態や種類による移行係数の違いを論じており、内容もやや難解であるため、以下簡潔に重要な点のみを紹介します。

[source:(財)原子力環境整備センター「土壌から農作物への放射性物質の移行係数」]

  •  セシウムについて見ると、牧草はその他食用の作物に比べて一桁高い移行係数を示しています。牛乳の危険度が高いのはそのためです。
  • ヨウ素は、果菜頬へは移行しにくい一方、大豆,また.ホウレンソウなどの葉菜類へは移行しやすいとしています。
  • 大麦は小麦よりもセシウム、ストロンチウムともに移行係数が高いです。
  • 玄米は高い移行係数を示し、精米することで白米に残留する濃度はセシウムで玄米の3割、ストロンチウムで2割程度となる。
  • 一般的な傾向としては、ストロンチウムは葉に蓄積されやすく、セシウムはカリウムと同様には全体に均一に分布します
  • 土壌が酸性だと移行係数は高くなります

 

また、以下のデータによれば、白米の移行係数が最も低く、他の作物に比べると概ね1桁低い値です。また、その他の作物の中で、葉菜類が若干高い値となっております。

[source:日本土壌肥料学会「日本における土壌から農作物(乾物)へのフォールアウトCs-137移行係数の例」]

以上のデータからわかるように、移行係数というのは研究機関によって異なることから、単純に野菜ごとに決まった値があるわけではないことに注意が必要です。

 

以下に内部被曝対策という観点から、野菜・果物・穀物を選択する際の重要な点をまとめました、時間の無い方はこちらだけご覧ください。

  1. 米は白米を中心に食すこと。玄米は汚染されていないことが確実なもののみ食すこと。小麦は米よりも汚染が可食部に残り易いため注意。(小麦は多少味が落ちても入手が容易な外国産をお勧めします。)
  2. イモ類、豆類は移行係数が高い傾向にあり、特に産地に注意すること。(幸い、イモ類、豆類は傷みにくいことから、九州産を入手するのは容易です。)
  3. 葉物野菜は比較的移行係数が高い傾向にあることに加えて、降下物(雨等)の影響を受けやすいので注意する。
  4. キノコ類、カラシナ、アブラナ科、ヒユ科の植物、ベリー科の果物は極力避ける。(特に極めて汚染されやすいキノコ類に注意
  5. 果物は移行係数が低く、比較的安心(ただし、ブルーベリー等のベリー類、みかん等の柑橘類は移行係数が高めなので注意)。

 

 

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