外出時の被曝対策はとにかくマスクをすること(瓦礫焼却によりリスクは上昇)

吸入による内部被曝の危険性については先述した通りです。

ある仮定の下では『一度地面に降下し風で舞い 上がるなどした放射性セシウムを取り込んだ場合の内部被曝量は、大気から直接吸入するのに 比べて約10 倍多い』との解析結果が出ています。つまり、原発からの直接の放出量が大幅に減っているからと言って、外気から放射性物質を吸入する危険性が減っているわけではないことに注意が必要です。

この研究結果の発表は、予想外にメディア等での反応が大きかったため、後に下記の通り、「仮定が安全側に寄りすぎた」との異例の追記がされたました。しかし、ある仮定の下では、一旦地面に降り積もったセシウムが、舞い上がり等により再浮遊し、それを取り込んだことによる内部被曝線量が非常に大きい可能性があるということであり、埃が舞いやすい場所、また風の強い場所・時間帯には十分注意する必要があります。

[source: 日本原子力研究開発機構「『吸入 摂取による公衆の内部被ばく線量評価』の発表内容について」]

 

2012年以降は放射性セシウムが含まれたスギ花粉が原発周辺部より都心部に飛来しています

花粉は最大300km程度飛散すると言われ、避難エリアからの花粉が東京を超え、神奈川県南部にまで到着する可能性は十分にあります。林野庁によれば福島県内における調査において、スギの雄花に含まれる放射性セシウムの濃度は最も高いスギ林で 約25万ベクレル/kgであったとの調査結果が出ており、汚染された花粉を吸いこまないことが重要です。 2013年の飛散量は全国平均では2012年の1.7倍、東北や関東の多いところでは2012年の3倍近くになるところもあると予想されております(ウェザーニューズより)、花粉飛散開始の時期に注目してください。

高濃度のセシウムが含まれる可能性があるスギ花粉

[source: 林野庁「スギ雄花に含まれる放射性セシウムの濃度の調査結果について(2011年11月)」]

[source: 文部科学省「放射性物質の分布状況等に関する 調査研究(森林内における放射性物質の移行調査)の結果について(2011年9月)]

 

林野庁の調査によれば、高濃度に汚染されているのは福島県内のみならず、栃木、群馬、茨城県内のスギ花粉においても300~1,500ベクレル/kg程度の濃度の放射性セシウムが検出されています   また、「モーニングバード」(テレビ朝日)という番組による独自調査によれば、奥多摩(東京都青梅市)のスギ花粉の放射性セシウム濃度の検査を行なった結果、スギ花粉から93.8ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されました。

そして、このスギの葉からは322ベクレル/kg奥多摩の土壌からは1,381ベクレル/kgの放射性セシウムが検出されました。 (土壌の汚染度は、 東京の汚染度について > 東京は住めるのか で述べたとおり、奥多摩地域は都心部よりも汚染度が高いと考えられますので、都心部平均の土壌汚染度である数百ベクレル/kgをやや上回る土壌汚染度は当サイトの分析と整合性があり、十分頷ける調査結果です。)

 

さらに既に関東エリアの一部である東京都埼玉県群馬県茨城県では被災地(岩手県、宮城県)の瓦礫焼却が行われています

焼却される宮城県や岩手県の瓦礫の一部が放射性物質に汚染されていることは 東京の汚染度について > 東京は住めるのか にて紹介した汚染の広がり状況から明らかです(特に宮城県女川エリアは高濃度に汚染されています)。放射性物質に汚染された物を燃やすということは、せっかく原発からの直接的な放射性物質の放出量が減少しているにも係らず、より私たちの近距離で小さな爆発を起こして汚染物質を大気中に拡散することと同義です。そう、焼却は再び爆発させることに等しいのです。放射性物質を確実に捕捉できる高性能のフィルターを備えている焼却施設は一部に過ぎないことからから、2012年以降は昨年後半に比べてより吸入摂取のリスクが高まることが懸念されます。特に東京都における処理量は他の都府県より多いため注意が必要です。

(追記)2013年1月25日に環境省より発表された「東日本大震災に係る災害廃棄物処理進捗状況・加速化の取組」によれば、宮城県分は2013年3月をもって広域処理の終了が見込まれることとなりました。これは当初予定(約3年間)を大幅に前倒しての広域処理の終了であり、東京都はじめ南関東にお住いの方々にはポジティブなニュースです(前倒しの理由は、処理のスピードがあがったということより、当初の瓦礫量の見通しが多過ぎて、その量を下方修正した要因が大きいようです。)。しかし、岩手県分は2013年末まで継続する見通し(こちらも前倒しの可能性は十分にあると考えます)であり、何より被災地では今後も瓦礫の焼却が継続することから、風向きに注意して生活することが必要と思われます。

 

放射性物質の吸入は普通のマスクで防ぐことが難しいとされています。 空気中を浮遊している放射性物質の粒子は、0.3μm(マイクロメートル=ミクロン)程度の非常に小さな微粒子(ナノ粒子)であり、一般的なスギ花粉粒子(潰れていない花粉の場合)の大きさは30μm程度であるため、通常の花粉用マスクで除去できるのは10~30μm程度です。(1マイクロメートルは10-6メートル、つまり0.001ミリメートルです。)

よって、ドラッグストアやスーパー等で販売している「花粉・ウイルス飛沫を99%カット」等と謳われているマスクでは残念ながら吸入による内部被曝を防ぐことはできません。もちろん大きな粒子を防ぐことはできますので何も着用しないよりは遥かにマシです。

 

汚染瓦礫焼却によりさらに危険性の高まった吸入による内部被曝を予防するためには、0.3μmのサイズの粒子を 95% 以上捕集できることが謳われているN95 規格(米国 NIOSH(National Institute of Occupational Safety and Health)が定めた基準)以上の性能を持つマスクを着用する必要があります。下記の通り、N95以上の性能規格として、N99、N100もありますが、現状の東京レベルの汚染度であればN95水準で十分でしょう。

  • N95規格:0.1~0.3μmの微粒子を95%以上除去できる性能
  • N99規格:0.1~0.3μmの微粒子を99%以上除去できる性能
  • N100規格:0.1~0.3μmの微粒子を99.97%以上除去できる性能
なお、近年中国内陸部の砂漠化の進行により西日本だけでなく関東でも被害が深刻化している黄砂の粒子のサイズは1~4μm程度(日本に飛来する黄砂は特にサイズが微小であるため、肺の奥にまで達しやすく、肺組織から直接、血中から全身の組織に悪影響を及ぼすと言われています)と通常のマスクで防げない非常に細かいサイズですが、上記N95規格マスクであれば防ぐことができます
加えて、2013年以降マスコミ等で騒がれることとなった中国大陸からの環境汚染物質である「PM2.5」についてはサイズはその名の通り2.5μm以下の細かいサイズで通常のマスクでは殆ど防ぐことができませんが、N95規格マスクであれば問題ありません。しかし、中国からの微粒子物質の日本列島への飛来は10年以上前から始まっていたことであり、その量も大きく増えているわけではありません。大量に吸い込めば健康への影響は免れないものですが、その影響は放射性物質と比較すれば軽微なものと思われます。まるで今年になって突然大量に飛来してきたような報道がされておりますが、原発事故による放射性物質の方が遥かに危険だという認識を持ちましょう。
いずれにせよ、放射性物質の粒子や粉塵、花粉、黄砂、PM2.5といった化学物質といった汚染物質をシャットダウンするにはN95以上のマスクが必要となります。どうせマスクをするなら、N95マスクを着用することをお勧めします。

ちなみにN100規格のマスクとは上の写真で枝野元官房長官が着用しているようなタイプのものです。

 



DS2マスク相当品 3M製 9010 N95/1箱50枚入 防護マスク(防塵・防じん)

N95マスク製造で実績のある住友3M社製のこのN95マスクは0.06~0.1μmの塩化ナトリウムが95%除去できたことが確認されているとのことですので、ほぼ放射性物質の吸入摂取を防ぐことができます。筆者も同様のマスクを所有しておりますが、かなり強力なゴムによってお椀型のマスクを顔面に押しつけますのでフィット感が強いのですが、それゆえ長時間着用していると後頭部や耳の付け根が痛くなってしまいます。

何より、明らかに普通の花粉症用マスクとは見た目が明らかに異なり、緊急用というイメージが強いので外観上の問題から職場等で常時着用するのは難しいでしょう。緊急時用にカバン等に入れておくことをお勧めいたしますが、現実的には日常的に使用するのは厳しいです。

 

 

メール便発送・送料無料 高機能 ミクロキャッチマスク 4層構造 密着立体タイプ 5枚セット (左記60枚セットは品切れ状態が続いております。現在入手可能なのは上記5枚セットのみのようで、現時点では最安と思われますが、価格の変動を考慮して念のため同じくAmazon内にて他の「ミクロキャッチ」をチェックすることをお勧めします。)

筆者はこの「ミクロキャッチ」というマスクを常用しています。N95規格をクリアしているというのが最も重要な要素ですが、値段が手頃なことに加えて、何より着用時の外観が通常のマスクとあまり変わらないという点が毎日着用する上では一番助かります

顔へのフィット感が良いというのも利点で、顔面とマスクとの隙間から放射性物質を取り込んでしまう恐れが少ないという点で評価できます。ただし、そのフィット感の代償として大人の男性が長時間着用すると耳の付け根が痛くなってしまうという欠点があります。

また、使い捨てでなく数日間使えるというのも経済的には助かりますが、当然何日も使い続けるのはマスク自体に放射性物質が含まれた粉塵が吸着していくために、何らかの拍子にマスクの内側に付いてしまうといったリスクがあるため、できれば2~3日程度で頻繁に交換することをお勧めします。筆者の場合は通常の安いサージカルマスクを当ミクロキャッチの上に重ねて2枚重ねとし、外側の安価なマスクを使い捨て、ミクロキャッチを数日毎に取り換えるようにしております。これにより比較的大きい放射性物質の粒子をミクロキャッチ本体に付かないようにすることが可能です。

 

N95「ミクロキャッチ」マスク(花粉症にも有効)

 (↑4日間使用後のややくたびれた「ミクロキャッチ」マスクです。左が外側、真ん中が内側。右が普通のマスクと重ねたものです。どちらかというと女性にフィットするサイズですので、男性は長時間するとやはり耳が痛いですが、通勤時のみの使用であれば問題ないと思います。)

 

尚、当然ながらN95規格で且つ密着度が強いため、通常のマスクと比べると花粉や黄砂等は殆どシャットダウンしてくれます。静岡県以西の汚染が低い地域の方でも重度の花粉症の方、特に九州地方にお住まいで中国大陸からのPM2.5や黄砂の害に悩まされている方は、花粉対策・黄砂対策という観点から使用してみる価値はあると思います。

 

どうしても上記のマスクでも人目が気になる、耳が痛くて長時間できない、という方には通常のサージカルマスクの間に水で濡らしたガーゼやウエットティッシュ等を挟むという方法もあります水分が粉塵の吸着能力を高めるため、水の層ができるだけでかなり放射性物質の吸入を防ぐことができます。水の層は有害物質を吸着してくれるのです。ただし、この方法には内部のガーゼ等が乾いてしまうと一気に防塵能力が下がってしまうという致命的な弱点がありますので、頻繁に水分を補給できる場合を除いてはあまりお勧めできません。(それでも何も着用しないことに比べると遥かにマシです。)

 

東京の汚染度はマスク無しで外出できるような状況ではありませんが、どうしても通常のサージカルマスクしか着用できないという理由がある方は上記の方法で凌ぐことをご検討ください。尚、上述したように通常のマスクはN95マスクに重ねて着用することでN95マスクの見た目をカバーしたりN95マスクの寿命を延ばす効果があるので、筆者は通常のマスクを単体では使用しませんがN95マスクと併用しています。通常のマスクは割安なネット販売店等で数十枚~数百枚単位で購入することで1枚当たり単価を抑えることができます。

ダイワボウノイ「プルシアンガード3Dマスク」Sサイズ 30枚 ダイワボウノイ「プルシアンガード3Dマスク」Lサイズ 30枚

比較的新しい商品では 「プルシアンガードマスク」という製品が発売されました。 従来の花粉・抗ウイルス機能に、セシウム吸着機能を持つプルシアンブルー(体内からセシウムを体外に排出させる薬として利用されており、医薬品として認可済み。ただし、服用に制限あり)を含んだ不織布を追加したものとのことです。4層構造になっており、プルシアンブルー入りの不織布は一番外側で、内側にはメルトブロー不織布を使っているため非常に目が細かいので、内部被曝対策に加えて、花粉対策にも万全でしょう。

ただ、価格的に上記「N95 ミクロキャッチ」より高価であるため筆者はまだ購入しておりませんがセシウムイオン吸着率 90.0%以上を謳っていることもあり、一度使ってみたいと思います。耳のゴムが長時間装着に堪えられるよう太目に作られているというのは評価できます(ミクロキャッチは長時間装着するとかなり耳が痛くなります)。ミクロキャッチの見た目や装着感が合わない方はこちらを試してみるのもいいでしょう。

 

 

放射性物質吸入対策 N95マスク

 

最後になりますが、花粉対策と同様に、衣服に放射性物質が付着してしまうとそれを何かの拍子に体内に取り込んでしまうリスクがあると同時に、室内に放射性物質を持ち込んで恐れがあるため、極力表面がツルツルして埃や粉塵が付着しづらく、且つ頻繁な水洗いが可能である衣服で外出することをお勧めします

 

<追記>

吸入対策だけでなく目からの放射性物質の侵入も防止することをおススメします。特に、大量の汚染瓦礫焼却を行っている東京都およびその周辺、また花粉飛散時期は特に対策が必要です。放射性物質が角膜に付着することによる眼病予防になります。

メガネメーカー各社が販売している花粉症用メガネが有効です。店舗にて度入り加工が可能なもので安価なものでは「パリミキ」、「JINS」、「Zoff」等が販売しており、5千円から1万円以下にて度入りメガネが購入可能です。 近視ではなくレンズを度入りに矯正する必要が無い方は通販等でより安価なものがすぐに入手可能ですので、ご自分の好みあったデザインのものを購入してください。

花粉症用メガネ(Amazon検索結果: 価格帯は1,000円程度から,「送料無料」商品中心)

商品にもよりますが、メガネをしていない状態に比べ、概ね9割程度の花粉カット効果を謳っていますので、放射能汚染されたホコリや粉塵から目を守る被曝対策として極めて有効です。

放射性物質から目を保護する花粉防止メガネ  (↑筆者が使用している「パリミキ」の花粉症用メガネです。放射性物質から目を守るために花粉の季節が終わっても使用しております。雨の日など湿度の高い日はマスクと併用すると非常に曇りやすいので、頻繁にハンカチ等で拭く必要があります。さらに夏日となった現在はかなりのストレスとなっているのは事実です・・・。)

 

 

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